よきものを売れ‥末は繁盛
近江商人で白木屋創業者・大村彦太郎可全は 「商いは 高利をとらず正直に よきものを売れ 末は繁盛」 という歌を家中の者に昭和させ、誠実な商いを徹底したといわれ、次のようなエピソードが残っています。 手代が、紙切れのように薄い粗悪な絹織物をたくさん仕入れてきたので、 「こんな物を誰に売るのか」と可全が聞くと、手代はしたり顔で 「武家の奥方は、見た目が美しければ喜んでお買いになります。薄くて破れやすければ、早く次も買っていただけますから、それだけ儲けになります」と答えました。可全は激高し、 「相手にお金があることにつけこんで、相手を偽り、暴利をむさぼるようなことは絶対にしてはならない。これは我が家の家法に背くことだ」と言って、その絹織物をその場で引き裂いたそうです。 当時の儒学者・三輪執斎は、 「可全のごときは、実に商人の王道なるものなり」と評しました。可全の教えは、後継者によって 「享保定法」として受け継がれています。 [白木屋(享保定法)よ
り] 販売にあたっては、地元、地方や、取引額の大小に限らず、お客様を大切にしなさい。特に、少額のお客様ほど、丁寧に応対しなさい。大口のお客様は自然と丁寧に応対するが、買い物の多少に限らず、十分に丁重に応対し、お帰りになる節には、店の出口まで出て腰をかがめ、ご挨拶するようにすれば、また重ねて買い物に来てくださるものである。…西平寿昭…